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「都市とポピュラー文化」2日目 めくるめく環境音楽の世界!

こんにちは。都市イノベーション学府M2 の野口です。前回までは無償であれこれ書いていた僕ですが、なんだかこの度正式に(ではないのかもしれない)アシスタントとして働くことになったらしく。つまり現在、僕は給料をもらってこの文章を書いているわけです!資本主義万歳!!

というわけで、8月はAmazonビデオで『機動戦士ガンダム』『機動戦士zガンダム』ばかり見ていたせいでザクに撃墜される夢しか見ていないんですが、9月は早速ラボの授業に出撃。特別セミナー科目「都市とポピュラー文化」2日目、小松正史さんによるサウンドスケープの授業です。ちゃんとお金もらいたいから、もうテキトーなことは書かないぞ!

サウンドスケープとはその名の通り「音の環境」という意味ですが、どうして最近そんな研究が盛んになっているのかというと、そこには長い音楽研究の歴史が関係しているそう。伝統的なクラシック音楽のような、メロディや和音ばかりが注目されてきたせいで、ちょっとした風の音やノイズのような音はあまり研究されてきませんでした。

こうした幅広い音(sound)に焦点を当てるのがサウンドスケープの研究。横国でいえば中川克志先生もこの領域ですが、主に現代音楽を対象にする中川先生に対して、小松先生は電車の走行音や呼吸の音のような、日常で見過ごされてしまう環境音を対象にしているそうです。

というわけで、環境音が大好きな小松先生。線路を走る音だけで電車を区別したり、普段から機材を持ち歩いて気になる音があったらすぐ録音したりするほどの音に対するフェティッシュなこだわりを持っているそうです。『タモリ倶楽部』に出演できそうなキャラだ……。

授業は90分×3のなかなかハードな集中授業なんですが、ワークショップも多めで賑やかな授業風景に。

こちらは「鳴き竜」の実験ワークショップ。教室と屋外で手を叩いたり楽器を鳴らしたりして、音の響き具合を比べています。

カモメの声が気持ち良いBankARTの海沿いでも実験。青春かよ。風景にマッチしないと思われたのか、僕は教室でお留守番でした……。

潮風に吹かれるむろにゃん。

この実験からもわかるように、環境音を考えるときに重要なのは、普段から聞こえているはずなのに意識できる/できない音の区別です。例えば、僕らの体内では常に血が流れる音が鳴っていますが、普段は全く意識していないはず。

『4分33秒』で有名なジョン・ケージは無響室に入ったときに、「2つの音が聞こえる。体内を血が流れる音と、神経系が動く音が聞こえた」みたいな言葉を残しています。つまり、僕らが生きている限り無音の空間など存在しないというのです。この言葉を聞いたとき、僕は「こいつ神経過敏だな」と思いました。

他にも、例えば踏切のサイレン音を聞くと僕らは「あ、今から電車が来るぞ」とメッセージを受け取ります。このように日常で響く多くの音には「意味」が付与されていますが、それによって僕らはその音自体を深く聞こうとしなくなってしまいます。たしかに踏切の音なんてしみじみ聞こうとしないよなぁ。

みたいな感じで、僕らの周りにはメイン/背景として様々な音が存在しています。逆に言えば、自分では意識できないような音に僕らが影響を受ける場合だってあるということ。小松先生は自身の研究を生かして、最近では環境音楽のプロデュースも手がけているそうです。

これは言ってしまえば、美術館のようなスペースで流れているBGMのこと。鳥のさえずりなどの自然の音や周囲の状況をリサーチした環境音楽を流せば、そこにいる人たちが快適に過ごせるようになるというわけです。

授業の後半では、そんな小松先生が作曲した環境音楽を生LIVE。本に囲まれたシックな空間で快適な音楽を聴くという、『WIRED』で特集されそうな上質な暮らし……。(朝5時までガンダム見てたせいではなく)あまりに快適だったので、ついついうとうとしてしまいました。

さすがに初出勤で寝るのはまずいので(ほとんど)寝なかったのですが、思春期なので何事も疑ってかかる僕は、実は寝てもよかったのではないか?とか考えていました。だって、リラックスを目的にした環境音楽を聞いているんですよ??リラックスのための音楽を聞いてリラックスして寝るのは、むしろ作品の受け取り方として正解じゃないかと思ったんです。うるせぇ、授業聞けよ。

で、その後はむろにゃんと佐藤守弘先生を交えたセッション形式の授業。例によって佐藤先生はいろんな具体例をポンポン出しながら話を進行して、むろにゃんはぶすっとしていたのですが、オタクくさいものが好きなむろにゃんが、「昔の小松くんは京都タワーの環境音楽を録音して喜んでいたのに、最近はアーティストみたいな活動もしているんだな」みたいなことを言っていました。

これはもちろんベタに受け取ると、活躍しだして親元を離れる子供に寂しい目線を向けるおっさんの図なんですが、今回の授業テーマとも結構リンクしている気がしないでもないっぽい感じが微かにします。

というのも、BGMとしての環境音楽を生演奏したりCDにしたりする(小松先生の環境音楽はCDでもお求めいただけるそうです!)というのは、これまでの背景音楽のあり方とは少し勝手が違っているからです。ここではもはや背景音楽は背景ではなく、メインとしての位置を獲得しています。

小松先生は、背景音楽をCD化することを「お土産として人に届けるため」と話していました。特別な場でしか聞けなかった背景音楽をどこでも聴けるのは嬉しいことだし、これによって背景音楽への注目度はますます高まっていくはずです。

しかし、背景音楽がメインを張れるようになったとしたら、メイン/背景という区別は一体どうなるんだろう?とも考えてしまいます。小松先生の活動は背景音楽の認識や理解を深めるとともに、必然的にそれを背景ではないフィールドに引っ張りだすはず。さらに、それは環境音楽の再定義にもつながるはずです。

小松先生は、先のむろにゃんのコメントに「自分の活動を錬金術のように思ってしまうことがある」と返していました。自分のやっていることが当初の意図を離れて様々な人に様々な意図で受け取られていることを示しているはず。これが研究者の楽しみでもあり、難しいところでもあるのかなと思います。

小松先生、5時間にわたる楽しい時間をありがとうございました!

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