

特別集中講義
『歴史の終わり、そしてその先へ』
ー21世紀の精神現象学ー
担当講師:吉岡洋
日時:12月22日〜25日(4日間)
会場:未定
【授業の目的】
この国の政治はブレーキの壊れたトラックのように暴走し、経済は容赦のない市場原理・競争原理の徹底と同一視され、そして大学においてすら、自由にものを考えうる場が剥奪されようとしている今、「世界が終わりつつある」と直観している諸君は少なくないだろう。発展や進歩を喧伝する言葉はすべて空疎に響き、大きな絶望が胸の中に膨らんでいても、それを口にすることも許されない私たちは、まるで中世の拷問具「鉄の処女」に閉じ込められた罪人のようだ。
だがあえて言おう。その直観は正しく、その絶望は正当である。しかしながら、われわれは黙って絶命させられるわけにはいかないのだ。その直観と絶望には、言葉が与えられるべきであり、それらは思考へともたらされるべきなのである。さて、世界史の終わりについてはじめて思考した哲学者はヘーゲルであった。本講義は、ヘーゲルの『精神現象学』という本を中心に、それが現在の私たちの運命を読み解くためにどのように使えるのかを探査する試みである。
哲学の講義ではあるが、知識や教養の獲得を目標とするものではない。また、難解な用語や概念を上手に操って互いに頭の良さを競い合う知的遊戯を習得することが目的でもない。哲学の営みがたんなる知識の集積とか知的遊戯に堕していること自体が、世界の終わる一徴候にほかならないのであり、このことを徹底的に批判した思想家こそヘーゲルだ。この講義は、『精神現象学』をこの21世紀において読むこと、私たちが知らず知らずのうちにすすんで自らの思考に課している、鉄の軛を断ち切るために読むことを試みるものである。
【授業概要】
12月22日(火)13:00〜18:00
1. 自己紹介と本講義の概要説明。
2. 西洋哲学の基本的フレーム。自然と人間、歴史と国家、宗教と哲学の関係について。
3. ヘーゲルの時代。 啓蒙思想、市民革命、ドイツ観念論について。
12月23日(祝)10:30〜18:00
4. 『精神現象学』を読む(1)感覚的確信、知覚、悟性について。
5. 『精神現象学』を読む(2)意識、自己意識、自然と科学について。
6. 『精神現象学』を読む(3)理性、精神、絶対知について。
7. マルクスの思想とマルクス主義について。
12月24日(木)10:30〜18:00
8. A・コジェーヴ『ヘーゲル読解入門』を読む(1)
9. A・コジェーヴ『ヘーゲル読解入門』を読む(2)
10. 「芸術の終焉」の系譜——ヘーゲルからダントーまで
11. ジル・ドゥルーズ『アンチ・オイディプス—資本主義と精神分析—』を読む
12月25日(金)10:30〜18:00
12. フランシス・フクヤマ『歴史の終わりと最後の人間』再検討
13. トマ・ピケティ『21世紀の資本論』の思想的背景を考える
14. 全体の総括および質疑応答
15. 授業時間内に課題を出し最終的な評価のためのレポートを作成する。
【履修目標・到達目標】
目標は、何よりも批判的な思考力を高めることであり、そのための言語運用能力を磨くことである。そもそも「これこれの知識を学べばここに到達できる」などという知識習得のモデルを根本的に批判しているのがヘーゲルの『精神現象学』である。道具的な知識の獲得ではなく、思考の弁証法的な運動こそが重要なのであり、そうした運動の実践こそが哲学である。
【授業方法】
資料は授業中に適宜指示または配布する。画像教材は使用する予定はない。
授業中の質疑はいかなる時にも認め、学生から提起された問題に関して討論に値すると考えられるものは積極的にとりあげ討論を行う。集中講義の各講義日の終わりに課題を提示し、小レポートを作成して翌日提出する。また最終日の最終講義時間には授業中にレポートを作成する。
【成績評価の基準】
講義への出席日数(30%)、授業時における発言や小レポートなどの平常点(30%)、最終日に行うレポート(40%)によって評価する。
【参照ホームページ】
http://chez-nous.typepad.jp/tanukinohirune/
【教員からの一言】
何のために哲学するのか? 希望に到るためである。けれど絶望をくぐり抜けなければ、本当の希望には到達できない。そしてそのためには連帯が必要である。
参加ご希望の方は、
1名前
2所属
3学籍番号
4メールアドレス
を明記の上、y-labo@kitanaka-school.netまでご連絡下さい。
※【『情報文化論B』『思想と文化ⅠA』を受講のみなさま】※
この授業は横浜都市文化ラボへの履修予約と『情報文化論B』『思想と文化ⅠA』の履修登録が
必ず必要です。23日の祝日も実施しますが、授業時間等については初日に詳しく説明します。
y-labo@kitanaka-school.net まで履修予約を必ずして下さい。予約のない者は受講できません。
