集中講義3日目 - ヒップホップにおける「関係性」
- 安齋
- 2016年9月11日
- 読了時間: 4分
先週5日間行われた京都清華大学集中講義、
週末を挟んでしまいましたが後半戦をアップしてゆきます!
(野口くんのブログをお楽しみにしてくださってるみなさん、すみません。今回の執筆者は野口くんではありません、あしからず。)
3日目を担当してくださったのは荏開津広さんです。


荏開津先生は、今回のコーディネーターの佐藤守弘先生と
約30年来のお知り合いだそう!
そんなおふたりの青春時代のお話もまじえつつ、
今回の授業ではニューヨーク、サウス・ブロンクスで
「ヒップホップ」が誕生した背景から、
日本語ラップの”今”まで
たくさんお話いただきました。
そもそもヒップホップを構成する主な要素は
「ラップ」、「DJ」、「ブレイクダンス」、「グラフィティ」で、
ブロンクスの若者たちの日常のカルチャーから生まれたものでした。

1983年に公開された『ワイルド・スタイル』の映画などで
メディアで形容詞的に使われていた「ヒップホップ」の語が
本格的に認知されはじめたそうです。
この『ワイルド・スタイル』、
観たことなかったのでこの週末に早速鑑賞してみました(DVDが去年発売されたようです)。
実際のグラフィティ・ライターやラッパーやDJ、ダンサーたちが登場していて、
かなりかっこいいです!

主人公がグラフィティ・ライターということもあり
映画の中でも中心的に扱われるグラフィティは、
電車の車体に描かれることで
多くの人の目に触れるようになったんですね。
車体がまさにメディアとして機能していたという荏開津先生の指摘にハッとしました。
ブロンクスといういわば郊外で育ったカルチャーが流布したのは、
電車もそうですが、『ワイルド・スタイル』のような映画など、
様々なメディアの影響だったんですね。
授業で鑑賞した参考映像:《Stations of the Elevated》(1981) documentary film by Manfred Kirchheimer
また、講義ではトリーシャ・ローズの『ブラック・ノイズ』の一部をみんなで読みました。
ヒップホップでは、
ターンテーブルを通常とは異なった方法で使用しますよね。
2台のターンテーブルを、
もともと存在している音楽を使用して、
楽器のように扱います。
これは、トリーシャ・ローズの見解によると、
奴隷として連れてこられてきた人たちが
彼らによっては変えることが不可能と考えられた社会通念を
ターンテーブルの使用方法を変えることで作り直している、ということだそう。
つまり、
もう完結してしまったと思われる音楽や
人気が既になくなっていたり知られていなかったりする音楽を、
プレイの仕方によって文脈を変えていくという脱構築的なものなのです。
西洋クラシック音楽にはないラップの「反復repetition」や「休止break」もまた
その場の状況・関係性の中で
一瞬一瞬ごとに物語を書き換え豊かにするものなんですね。

— ということを踏まえてJames Brownの映像を鑑賞しましたが、
彼の一挙一動で演奏が変化していったり、永遠にこの時間が続くような気がしてしまうのは、
彼の歌っている形式がリズムを豊かにして、
音楽を私たちに体験させるものなんだということがよくわかりました。
まさに「究極のモダニズム」(佐藤先生)ですね!
授業で鑑賞した参考映像:James Brown & The Famous Flames - The Legendary TAMI Show Performance
そして更にこのJames Brownがやっていたことが、
ラップでもまた再現され、
自分の生きている社会・関係性を書き換えながら・反復しながら体現しているという構造が、
すごく面白いなとおもいました!
先ほどから何度か出てきている「関係性」という言葉ですが、
ヒップホップカルチャーはもちろん、
他の文化でも重視されているものだと思います。
文化の発展にはある程度の排他性が必要かもしれませんが、
ヒップホップにおける、西洋一元的「ではない」視点からのものの見方など、
いろんなカルチャーを通じて様々な視座からものを見れる現代だからこそ、
もっと面白い「場」を発展させることができるかもしれませんね!
まだまだ書ききれていない日本語ラップのお話・日本語ロック論争、
はたまた飲み会での白熱した室井先生と荏開津先生の対談などありました。
荏開津先生、クールな授業をありがとうございました!